2010年3月5日金曜日

【経営事例】7話~製品戦略における陳腐化の効果とは何か?

読者のみなさん、こんにちは!  楯です。

前回は、【SWOT分析】の威力とその応用展開について説明しました。

かつ【BCGのPPM分析】で、その会社のいくつかの事業を当てはめてみると意外と
「その会社経営の判断基準」などが可視化され近い将来どのように事業を進化させるべきか、
会社経営陣にとって分かり易いのもではないでしょうか?
 
ここ近年日本では家電や化粧品を中心に、年間に次々と新商品をメ-カ-は発売している。
私も去年の5月、はじめて大手量販店デジカメを購入しました。
今年の正月、その量販店のデジカメのコ-ナ-へ行ってみたら、もうその商品は販売していなかった。
 そのデジカメのコ-ナ-の後発のまだ新商品を見ると、【在庫処分限定販売】と70~50%OFFの価格を目にしました。
 そこの店員いわく「このデジカメは、年に4回ぐらい新商品を発売しのすので・・・」と
返事が返ってきました。

 顧客にとって評判の良い商品は、愛用者が増えるしメ-カ-の商品開発コストはすでに投資済の状況だろうから、【金のなる木】として収益性は高いのに、なぜなんだろうか?

 一般の消費者からすれば「もったいないなぁ!」といった素朴な疑問をもつのではないでしょうか?
 逆に家電メ-カ-やトレンドに敏感な業界は、「顧客は飽きっぽい!」といった視点をもつ。

また、私は去年台湾へ計4回訪問した。
到着した空港の貨物受取場では、台湾の方の荷物のほとんどが日本製家電である。
数人の台湾の方に聞いてみました。
台湾人の旅行者いわく「日本の商品は新しいのが多いから!」と。
私も台湾滞在中、現地の家電量販店へ行ってみました。
同じ家電でも、少し以前の商品の陳列が目立ち、値段も1.5倍以上でした。
 台湾人にとって、「日本は買いモノ天国!」といった現状。

 そうした現象は、家電商品などを中心にした「商品寿命の短縮化」が大きく影響を与えていると考えます。
今回は、こうした視点で陳腐化について説明します。

■あえて商品の寿命を短縮するワケとは?(家電、アパレル等の流行に敏感な業界対象)
アパレル系メ-カ-のP社の例

 P社の新商品はA、B、Cの3つあるとする。
 新商品A、B、Cは、品質、機能性は同じだが、新色をラインナップしているとする。
新商品A、B、Cの発売時期を、2か月単位でBとCを遅らせて発売する。




特に、トレンドに敏感な家電やアパレル業界などでは、いくら良い品質・機能性をもつ商品であって
も次の商品の新鮮さを維持しなければならない要因がある。
計画的陳腐化の効果は
   1)顧客につねに次の商品に関心を持たせること。
   2)家電メ-カ-やアパレル会社の競争ポジションとは、つねに「差別化」にあること。
   3)競合海外メ-カ-からの新規参入障壁を保持する役割。
   4)メ-カ-にとっては、【売上・利益】は安定的に持続されることが理想。トレンドの流れが敏感で早い業界にとっては【新商品】を次々に発売することでそのリスクを分散させる効果もある。(新商品がヒットする確約はないから!)

■プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)を使って?
プロダクト・ライフ・サイクルとは、1~3年の商品の寿命を決めたり商品開発の指針を
決める上で有効とされている。
特に、その会社の【売りたい商品】【売りやすい商品】を予測し計画する上でも
視覚化されて見やすい分析方法である。



この上図の最大のポイントとは、
【売りたい商品】と【売りやすい商品】を社内で明確にし、顧客への関心を集中化することにある!
 『次の新商品はなんだろうか?』
 『次の新商品は、どんな機能性があるんだろうか?』

そうした、【顧客のCEとCS】を心理的に高揚させるといった効果が、この計画的陳腐化にはそうとうな威力が潜在する。

■なぜ1日、1分、1秒の速さで新商品や新ブランドを発売するのか?

ブランドの先発と後発とでは、市場での競争優位性は大きく変わる!
▼先発、後発による市場シェアの違い
 ☛先発ブランドでは、実に49.9%のシャア獲得!
  ☛後発ブランドでは、21.9%のシェアしかない!


▼後発ブランドの遅れ方による先発ブランドの市場シェアの違い
 ☛6カ月までの遅れ・・・・・・約37.7%。
 ☛6カ月から1年までの遅れ・・約54.0%。
 ☛1年以上の遅れ・・・・・・・約72.9%。
出所)『競争優位のブランド戦略』 恩蔵直人(2002年七刷)より

■社長さん!会社のドメインは明確になっていますか?
※ドメインとは、その会社の事業領域を示すもの!

①狙う顧客は、どんな顧客層ですか?
②社長さんの会社の競争優位とは、具体的にどんなものですか?
③提供価値。その競争優位から顧客へ具体的にどんな価値を提供できますか?

昨今の企業では、活発にM&A(合弁、合併、統合、TOBなど)を行うことで自社に保有しない
能力を買うことで企業価値の最大化を目指している現状。

いわゆる 『ドメインの不透明化』 の懸念から、顧客が本来イメ-ジしていた会社ブランドが
分からなくなってしまう企業が多々あるから。

例-1セシ-ルは元々「婦人下着の通信販売」として一躍有名になり
四国にあって上場会社へグイグイ成長した会社。
 
いまセシ-ルのHPを見ると、家具、日用雑貨、インテリア等々、「婦人下着」のコテゴリ-が
あっても消費者視点に立てば、「その中で何が一番強いのか!」といった、
いわゆるドメインが分かりにくい。
 
なぜなら、セシ-ルの有価証券報告書を見る限り、売上及び収益性において悪戦苦闘している
ことが容易に分かる。
 果たして、セシ-ルの複数の他事業を行う多角化戦略は、成功しているのだろうか?!

■企業の【単一ビジネス・リスク】とは?
企業の規模に関係なく、1つの事業に特化している会社は世間には多々ある。
しかし、もしその事業を取り巻く市場環境に劇的な変化が起き、業績が悪化したらどうしたら
よいのか?
 極論をいえば、倒産や廃業に追い込まれることを意味する。
なぜなら、他の事業で業績を補うことができないからに尽きる。
 これらを、 【単一ビジネス・リスク】と呼ばれている。

特に、企業の規模に関係なくその会社の売上高比率が概ね70%以上依存した取引関係に
よくある事例である。

いわゆる、下請け会社のような経営形態にある会社。

なぜこのようなこと書くのか。

私が会社員当時、現在のように商品がなかなか売れない時代ではなかった。

ゆえに、下請け会社は自社に営業マンを置かなくても、親会社から「棚から牡丹餅」的に
注文が入るので、こんな美味しいビジネスはない。
それは、営業マンの人件費から諸経費を親会社に依存しているとも解釈できる。

そして、その業績は「自ら生みだしたものへと錯覚を起こすようになる」。そんな
下請け企業を見てきたからだ。

だからといって、営業マンを採用して育て、自社で営業開拓し実績を生みだすには
相当な時間を費やすので、万が一親会社の業績が悪化した場合、下請け会社の経営体質の弱さから倒産や廃業へ追い込まれるのも早い。

それらは、新聞や報道でのトヨタ・ショックの現象に顕著に表れている。


例-2 まずは単一ビジネスからの脱却を目指すべき。
仮に下請け会社D社は、親会社E社との取引関係で考えてみます!
 
■D社の取引は、E社の注文に100%依存していると仮定。
  昨今の企業や業界によっても違いがあるが、
  E社の業績が低迷を続ければ、D社に策がない限り、いずれ最悪の結果に陥る可能性大。
 
■D社の取引は、E社の注文に60%依存していると仮定。
  E社の業績は、長年の取引上伸びているか低迷しているかといった情報は一般的に
  入る。
  D社とすれば、E社は70%依存だからすぐに最悪のケ-スに陥る可能性は低い。
  とすれば、他の30%の売上高比率を50~60%まで引き上げる営業努力なり
  自社のコンピタンスを使い新たな商品を売り込む時間的猶予はある。

 以前、私は大手建材メ-カ-の部長と商談したとき、
 その会社での売上高依存度は高くとも30%未満に抑えているとお聞きした。
 これは各事業部をもつ会社での、事業リスク・ヘッジとも解釈できた。

  できることなら、単一ビジネスの企業でも、売上高依存度を抑えつつ、他の顧客開拓に
  力を注ぎ、いわゆる【経営におけるリスク分散】を目指したい。

  それは、親会社の業績が低迷しているのに、下請け会社の生活、その社員の生活など
  面倒みてくれる保証は一般的にないに等しいからだ。
  
次回、8話は「これからの営業・販売!どんなタイプの営業マンを望むか?」を掲載します。

では、次回また

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